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この人にインタビュー

Vol. 09

横山秀夫さん(作家)
Vol.09:横山秀夫さん(作家)

ベストセラー『半落ち』は、そのオチが骨髄移植の現実性に照らして問題あり!などとして、直木賞落選。反論が相次ぎ自らも直木賞に絶縁状を叩きつける。ミステリーファンの支持は圧倒的で、ついに来春映画化が決定。

2003年9月28日に早稲田大学大隈講堂で行なわれた「骨髄バンク推進全国大会」。その大会に、ミステリー作家の横山秀夫氏がゲスト出演。司会を務めたフジテレビアナウンサーの菊間千乃さんとの特別対談が行われた。横山さんには対談のゲストとしての顔とは別に、骨髄バンクのドナーとしての顔、そして元患者の父親としての顔がある。

「私の息子が中学生のときに悪性リンパ腫を発病し、骨髄バンクを通じてドナーの方を見つけていただきました。5年前に骨髄移植を受け、現在は元気に大学に通っています。それまでは、恥ずかしい話ですが私自身、骨髄移植にあまり関心も持っていなかったのですが、息子を救ってくれた誰かのために、自分もお返ししたいと思って、息子の移植後に妻と一緒にドナー登録しました」

その体験から、『半落ち』が生まれる。「半落ち」とは、完全自供の「完落ち」に対し、全面的に容疑は認めるものの犯行の一部を語らない状態。アルツハイマーの妻に請われて殺人を犯した現役警部が、犯行後自首するまでの2日間についてだけはぜったいに口を割らない。『半落ち』は、この空白の2日間をめぐって捜査官、記者、検察官などが苦闘する物語である。犯人夫妻は13歳の息子を急性骨髄性白血病で喪うという過去を持ち、犯人の警部は骨髄バンクのドナーでもある。

「息子の骨髄移植に対しては、骨髄を提供してくださった方はもちろんですが関係者の方たちに対しても、感謝してもしきれない思いをもっています。たまたま私は書く仕事をしていますので、その中で何かのお役に立ちたいという気持ちがありました。ただ難しかったのは、エンターテイメントとの兼ね合いです。私は 12年間、新聞記者としていわゆるノンフィクションを書いてきて、そこから転じて今はフィクションを書く仕事をするようになった。しかもそれはエンターテイメントという、いわば一生懸命働いている人たちに娯楽を提供する作品を書いているわけです。楽しんでいただく作品を書くためであって、何もお説教をするためじゃない。ですから、こうした私と私の家族にとって、現実的で重いテーマを小説に取り込むことが果たして良いのかという迷いと葛藤がありました」

プロフィール

横山秀夫/Yokoyama Hideo
上毛新聞の記者を経てフリーライター、作家に。かつて「伝説のサツ回り記者」と呼ばれ、現在は「平成の松本清張」の呼び声も高い。91年『ルパンの消息』でサントリーミステリー大賞佳作。著書に『陰の季節』(松本清張賞)文藝春秋、『動機』(日本推理作家協会賞)文藝春秋、『半落ち』講談社、『顔 FACE』徳間書店、『第三の時効』集英社など。
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