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この人にインタビュー

Vol. 11

中ざき吉廣さん
Vol.11:中ざき吉廣さん

白血病に冒され抗ガン剤によって髪が抜けた同級生のため、クラスメイト全員がスキンヘッドに...。アメリカCNNで報道され世界中を感動させた実話を舞台化した『友情』は、すでに足かけ6年・上演回数300回を超えるロングラン! ゼネラルプロデューサー中ざきさんが語る、この舞台が持つ"魔力"とは?

きっかけは、この『友情』の映画でした。知り合いからすすめられたんですよ、こういうのも見たら?って。そのころの僕は商業演劇の世界にどっぷりつかっていたわけで、たまにはまったくかけ離れた世界もいいんじゃないかと。

職業柄の悪い癖でね、映画や芝居を見ると、どうしてもその物語より先に裏方、作ってる側のほうに視点が行ってしまうんですよ。ああ、このシーンを作るのは大変だったろうなあとか、僕だったらこうするのになといった。で、『友情』を観て僕がまず何を思ったかといえば、「この話は映画より舞台でやったほうが活きるはずだ」ということでした。何か確信に近く直感しましたね。

僕ならこんなエピソードを入れたい、舞台だったらそれができる。そんな思いがふつふつとわき上がって。映画を見終わってすぐ、舞台化の了承を取りに映画の製作会社に行きました。行動は早かったですね。

正直、その映画は興行成績としてはおよそ成功とは言えないものだったから、製作会社の人も驚いた顔をしていました。「何を言ってるんだろう?この人は」って感じで。それから脚本家の布勢博一先生、そして骨髄バンク。全部自分で回って、ひとりひとり説得しました。僕をそこまで動かしたのは、やっぱりあの『友情』という物語が持つ魔力だったと思うんですね。

一週間や10日の興業では駄目だというのは、もうそのときからありました。この物語を人に観て知ってもらい、伝えていくのにはできる限りのロングランが必要だと。だから当初から、まず104日間の興業期間を最低限の条件にしてました。これもまた驚かれました。

短い期間でも、みんなでひとつのものに取り組んで、稽古してそれを上演してっていう達成感はあるから、芝居を作ってるほうは結構それで満足できちゃったりするんです。でもそれじゃいけない。とにかく長くやって、ひとりでも多くの人に伝えたいという気持ちが強かったですね。それでなにがあっても毎年公演する。そうして6年、300回を超える公演になろうというんだから自分でも驚きです。

長くやって人の道を外れなければ、必ず誰か見てくれる、振り向いてくれる。時間がかかっても、世の中にとって大切なことを次の世代までにも伝えていきたい。意識したわけじゃないですが、それはドナー登録者を増やすといった活動も同じだと思うんです。きっかけは何でもかまわないし、実は結構気軽な気持ちで人はその気になれちゃうもんなんですよ。

でも、その先が難しい。その情熱をどれだけ持ち続けていられるか、そのときだけで終わらない地に足のついた着実なものにしていけるか。そっちのほうがずっと大変で難しいんですよね。ひとりでは到底無理。『友情』も、たくさんのあらゆる人、そして髪を切って丸坊主になってくれた若いひとたちがこの企画に力を貸してくれたから今があると実感してます。

プロフィール

なかざき よしひろ/劇団 絵生(えき)代表取締役。1946年広島県生まれ。
新歌舞伎座の制作部長を経て、1995年独立し、全国各地の劇場公演をプロデュースする。1999年より始まった舞台『友情』ではゼネラルマネージャーを務め、以降毎年公演を続ける。今年で6年目となった同舞台は9月19日の横浜にぎわい座で上演回数300回を迎えた。
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